必然の死、生への執着

長寿遺伝子という華々しい発見は、長寿時代とも呼ぶべき新しい時代をもたらそうとしています。それはまさに歴史上の大展開と言えるかもしれません。

考えてみれば、私たちの祖先はつねに死を意識せざるを得ない環境だったのです。延々と続いてきた人間特有の営みは、その多くが死の概念に基づく考察から出発していると言えます。

芸術も哲学も、宗教もそうでしょう。必然の死という現実を受け止める宿命は、私たち人間の精神史における大きなテーマです。生物の中でもおそらくここまで死を強く意識し、生に執着するのは人間だけでしょう。

死を見つめる事で生の意義を求めてきたのです。長寿遺伝子という予想外の発見は、そうした人間の営みの根底を揺るがしかねないと言えるでしょう。